【パティスリー301の菓子図鑑 第1章】スフレチーズケーキ やさしいお菓子
私たちの菓子図鑑、その最初のページを飾るのは、この上なくシンプルな「スフレチーズケーキ」です。
毎週木曜日のケーキ販売の日。ごくたまに、このケーキは少しだけ静かに、行儀よく並んでいる時があります。正直に申し上げますと、一番最初に売り切れる、というタイプのケーキではありません。
私たちは、このケーキが大好きです。 口に入れた瞬間に、しゅわっと溶けていく、はかない口当たり。追いかけてくる、濃厚でありながら、くどさの少ないチーズの風味と、たっぷりの卵がもたらす優しい味わい。これみよがしな主張はないけれど、心と体に、じんわりと染み渡っていくようなおいしさ。
このケーキのこだわりを挙げるのならばは、「やさしさ」です。
メレンゲを潰してしまわないように、やさしく、やさしく混ぜ合わせる。 急な温度変化で生地が驚かないように、湯煎(ゆせん)で、やさしく、やさしく焼き上げる。
暑い夏、少し食欲がない日でも、このケーキなら不思議と食べられてしまうかもしれません。栄養価の高い卵をたっぷり使っているので、夏バテ気味の体への、ささやかな栄養補給にもなるかもしれない、と私たちは密かに思っています。
流行の最先端をいく派手さはないけれど、食べた人の心を、そっと優しく解きほぐしてくれる。そんな、お守りのような存在。 それが、私たちのスフレチーズケーキです。もし店頭で見かけたら、ぜひ一度、その「やさしさ」を味わってみてください。